女性と言うよりも、少女と言った感じだった。俺とほとんど年が違わないかもしれない。
癖毛を三つ編みに結び、頬にソバカスのある可愛いらしい子だった。
「どうぞ。亮様、喉が乾いていらっしゃるでしょう。」
見ると、紫色の水のような物がグラスに入っている。透明なグラスには水滴がつき、かなり冷えている
様子だった。俺の喉はごくりとなった。確かに、喉は渇いてカラカラになっている。
グラスを受け取ると、いっきに飲み干した。
葡萄ジュースかと思ったが、どうも違うらしい。味はカキ氷のシロップのように甘ったるく、少し喉に
苦味が残る。予想と味は全く違ったが、別に不味くも無く、良く冷えていたので、喉ごしも
かなり良かった。
もっと水分を取りたかったので、お替りを頼むと、そのメイドはかなり慌てた様子で断ってきた。
「亮様、これは……! たくさん飲んでしまったら、大変な事になってしまいます! 」
「なっ! えっ? コレは、一体何なんだ? 」
俺が尋ねると、メイドは焦ったように「失礼いたします。」と言い、走って部屋の外へ出て行ってしまった。
追いかけようと、俺が立ち上がると、入れ違いに寿が現れた。
「おい、何か飲んだんだけど。アレは、一体、何……。」
尋ねるが、寿は興味も無い様子で完全に無視し、無表情のまま自分の来た用件だけを伝えた。
「ご当主様がお呼びでございます。亮様。お部屋までどうぞ。」
そのまま、俺は寿の案内で、当主の部屋まで連れて行かれる事になった。
俺はガウンを脱ぎ、素肌のまま白い着物のような物を着せられた。その下は何も身につけていなかった。
当主に会うのに、こんな格好で良いのかと寿に訊ねると、「それはシキタリですので。」と意味不明の
返答が帰ってきた。
廊下を歩くたびに、素肌にサラサラとした心地良い布地の感触がする。これは絹では無いかと俺は
思っていた。
南棟の五階に当主・鳳長太郎の部屋はある。
エレベーターで五階へ向かい、当主の部屋へ向かって歩いていた俺は、廊下の角にある大きな鏡に
映った自分の姿に、心臓が跳ね上がった。
その姿がとても奇妙だったからだ。
長い髪は後ろで括られ、白く細い紐のような物で結ばれていた。そして、真っ白な着物を着た姿は
遠目から見ると、女にしか見えなかった。
皮膚は、メイド達に磨かれたせいか滑らかな艶があり、自分で驚くほど顔色も良かった。
色は透けるように白く、頬はバラ色とでも言うのだろうか?
さらに、白い着物はかなり薄いらしく、うっすらと布越しに皮膚が透けて見えている。
淡い桃色の乳首も、下腹部の茂みも、その下の男性自身の盛り上がりも、全部、外から見えているのだ。
それどころか、裸になっているよりも、嫌らしい感じがする。
「ちょっと……。寿さん。俺、何でこんな格好・……。」
質問を俺が言うよりも、先に、当主の部屋へと到着してしまった。
「宍戸亮様をお連れしました。」
ギギ〜なんて、重苦しい音をさせて、部屋の扉が俺の目の前で開いていった。
メイドの寿の手によって、俺の人生を狂わせてしまう、その運命の扉が開かれてしまったのだ。
その6 〜当主様の秘密〜の巻へ続く→行ってみる

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